ドリスのQ&Aセッションまとめ
ドリスセッションの後には、休憩を挟んでドリスのQ&Aセッションを実施しました。Q&Aの収集にはSlidoを使用して、総勢108名の方にリアルタイム投票とQ&A投稿に参加いただきました。
リアルタイム投票
ドリスへのQ&Aを行う前に、来場者に質問を5つほど出題してライブで回答してもらいました。Slidoを介して、ドリスと来場者で双方向のコミュニケーションが取れて良いアイスブレイクになったのではないかと思います。
Drupalは好きですか?
まず一番最初の質問は、来場者の皆さんにSlidoの使い方、操作方法をテストしてもらう目的で「Drupalは好きですか?」という質問を用意しました。
初めて触ったDrupalのバージョンは?
来場者の中ではDrupal 8で初めてDrupalに触れた方が多く、Drupal 8を中心に山型の分布となりました。
一番古い方だとDrupal 3から始めた方がいたのは驚きです。Drupal 1は2001年1月、Drupal 3は2001年9月にリリースされたものなので、ほぼほぼDrupal誕生と同時期からDrupalに触れていたことになります。
Drupalのバージョンアップの頻度は?(脆弱性含めて)
一番回答が多かったのは「半年に一度」でした。Drupalは半年に1度、マイナーバージョンがリリースされて機能追加が行われるので、そのタイミングでDrupalを更新する方が多いようです。
しかし、セキュリティバージョンも多い時は1ヶ月に1度行われるので、リリースされたら即座にサイトを更新することが理想的です。ドリスのセッションでも触れていた、Automatic Update機能のリリースが待ち遠しいですね。
drupal.org のアカウント、持っている?
Drupalの公式サイトである drupal.org では誰でも無料でアカウントを作成できるようになっています。コントリビュートプロジェクトに対して何らかしらの貢献(issue起票、コメント、パッチ提供など)を行ったら、ユーザーに対してクレジットが付与され、ユーザーページで一覧化されます。
もちろん、アカウントがなくてもDrupalをダウンロードしたり使うことができるので、会場の38%がアカウントを持っていないことは不自然な数字ではないとドリスはコメントしていました。
Coreやモジュール開発にContributeしたことがある?
Drupalはオープンソースソフトウェアとして公開されているため、誰でもDrupalの発展のために携わることができます。DrupalへのContribute(貢献)は例えばDrupalコアに対するものや、コントリビュートプロジェクトに対するものまで含みます。
Drupalが今後も発展し続けるには、Drupalを利用する人はもちろんですがコントリビューターの存在が必要不可欠です。OSSに貢献することは優秀な開発者しかできない、難しい印象があるかもしれませんが、難易度は様々です。issueを参照することは貢献の第一歩であり、タイポ修正、フォーラムでの質問回答、バグ報告、ドキュメント作成、テストへの参加、翻訳提案など、参加しやすいものもあります。
Drupalに貢献したいがやり方がわからない人に向けて、Drupal Associationではメンタープログラムの仕組みが提供されており、一対一で学ぶ手助けをしてくれます。教える側に回りたい方は、自身がメンターになることが可能です。
ドリスへの質問
ドリスへの質問総数は25個でした。内訳として、事前にGoogleフォームでもらった質問が11個、ライブでもらった質問が14個です。
もしDrupalをゼロから作り直せるとしたら、どんな技術スタックで作りますか?
ドリス: Drupalが成功した要因として、PHPを採用したことが1つ挙げられると思います。PHPは例えばJavaなどの言語よりも使いやすかったのです。もし言語の選択を迫られるなら、使いやすさで検討したいです(実際、今でもPHPは好きです)。他に検討するならば、JavaScriptやRustも候補に挙げたいです。Rustも興味がありますが、多くの人にとっては使いづらいかもしれません。
Drupalの価値を最大限に活かせるプロジェクトはどのようなプロジェクトだと考えていますか?
ドリス: Drupalの強みは柔軟性にあります。簡単なことをしたいのであれば、世の中に多くの選択肢があります。他システムとの連携や複雑な構成のアプリケーションを作りたい場合、Drupalを使えば少しのカスタマイズで行えます。
もし過去に戻れたとして、Drupalの直したいところはありますか?
ドリス: Drupalは元々自分のために作ったソフトウェアでした。自身が開発者だったので、自分(開発者)目線で使いやすいものを作ったわけですが、それはあまりユーザーフレンドリーなものではありませんでした。もし過去に戻れるならば、当初から「使いやすさ」に主眼を置いてDrupalを開発してみたいです。
Drupalのスイートスポットはどこにあると思いますか?
ドリス: 現在のローエンド市場には、多くのSaaSベンダーを含む様々なソリューションが存在します。Drupalはそこで勝負はしていません。前の質問(Drupalの価値を最大限に活かせるプロジェクトはどのようなプロジェクトだと考えていますか?)で回答したように、Drupalが得意とするカスタマイズ性、柔軟性が求められるようなハイエンド市場で、Drupalが価値を提供できると思っています。
私は主にReact(Next.js)とVue(Nuxt.js)を使っていますが、DrupalでヘッドレスCMSを構築する際に、どのフロントエンドフレームワークが最適ですか?
ドリス: 私自身はフロントエンド開発者では無いので、実際のところわかりません。ですが多くの方はNext.jsを利用しているように感じます。そして、Drupalには素晴らしいNext.jsソリューションがあります。
日本ではWordPressと比較されることが多いのですが、 WordPressと比較してDrupalが優れている点について教えてください。
ドリス: 10年前であれば、いつWordPressを使うべきか、Drupalを使うべきか混乱が起こっていました。ですが今日現在は、WordPressではシンプルなWebサイトで、Drupalはより複雑なサイトにフィットすると考えます。これは、必ずしも「シンプル=低トラフィック」、「複雑=高トラフィック」と捉えられるものではありません。高トラフィックを捌くようなサイトでも構成がシンプルであることもあります。ではどこでDrupalが輝けるのかと言いますと、メールマーケティングやデジタルアセット管理ソリューションなどの外部ツールと統合したり、ユーザーへのパーソナライズなど、Digital Experience Platformの世界を目指すような場面です。このような複雑で高度な事例でDrupalの力が発揮されるでしょう。
まとめ
多くの方にリアルタイム投票に回答いただけたこと、ドリスに対する質問が多く出たことを踏まえて、運営の予想を大きく超えてQ&Aセッションは盛り上がったようです!